コラム

第4回 「選手は育つ!」

2013.10.3

気づくと、コラムはほぼ自分への戒めとなっている。
分析家の先生に言われたことがある。
「グラウンドや試合会場などに掲げられている大弾幕(例えば、“誠実”や“一生懸命”などをよく目にするが)には、そのチームの指導者ができていないことが書かれていることが多い」と。
確かに。当たり前にできていることなど、あえて掲げる必要はなかろう。それは、指導者の人生の課題とでも言えるものか。
本コラムもそんな類のものだと考えていただければ結構である。

さて、今回は欧州サッカー連盟(UEFA)のアンディ・ロクスブルク技術委員長の有名な言葉から。

「指導者は選手の未来に触れている」

毎日、学生(選手)と関わる中で、私の発した言葉が、その人の人生を左右することすらある。そう少しは自覚するようになってから、喉元まで出かかって、飲み込んだ言葉がいくつもある。家庭ではなかなかうまくコントロールできていないが・・・
ガルウェイ曰く、「熱心すぎる(解釈:熱心に指導をしすぎる)コーチは選手をダメにする」。やるべきこと、そしてやってはいけないことの何箇条を細かく指摘し、さも熱心に指導した感覚に陥って満足感を覚える。まさに、過ぎたるは猶及ばざるが如し、である。
つまり、未来に触れているからと言って、「オレが育てる!」などと力むのも違う。

指導者が選手を“育てる”、のではなく、選手は“育つ”のだと思う。

しかし、“勝手に育つ”という訳でもない。
前述のアンディ・ロクスブルク氏曰く、「選手は勝手には育たない。タレントが偶然育ってくるのを待つのもいいだろう。しかしそれでは永遠に待ちつづけることになるかもしれない」。

料理は“塩加減”で決まると言われるが、育成における“塩加減”(手塩にかけるという言葉もあるが)も非常に難しい。

ではどう関わればよいのか(そもそも、良い悪いでもないかもしれないが・・・)。

まずは共に”在る”。焦らず”待つ”、温かく”見守る”。そして、時には”自分を賭ける”、”責任をとる”、“覚悟を持つ”。
名トレーナーのエディ・タウンゼントの口癖は、「ボクはハートのラブで教える」であったと言うし、大西鉄之祐は教育を、「そこにいる人間を愛する力」と書いている。
このあたりが私の仕事だろうか。
思いついたままに書き出してみたが、またしばらくしたら考えてみようと思う。

併せて、森信三氏が残した「教育とは流水に文字を書くように、はかない業である。だが、それを巌壁に刻むような真剣さで取り組まねばならぬ」という言葉も忘れないようにしよう。

 齊藤 茂

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第3回 「すぐに役に立つもの」

2013.09.21

うまくまとまらないが更新しよう。更新することが大事。言いたいことは伝わるはず・・・。ちなみに、明日は北信越大学サッカーリーグ、北陸大学戦。ちなみに、選手はすでに金沢へ移動。私は本日入試だったので、明日の早朝、出場停止選手と共に移動します。

さて、今回は伊集院静さんの「大人の流儀」シリーズから。ちなみに、ノーマル?、続、及び3「別れる力」の3冊がすでに出版されている。

伊集院さん曰く、
「すぐに役に立つものを手にして何かがうまくいっていると思うな。すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなる」

まさに。

私はスポーツ心理学を専門とする教員であり、「スポーツコーチング論」なる科目も担当している。また、サッカー部の学生を指導する監督(サッカーの指導はあまりしない、というかできないというのが正しいか・・・)として、さらには一教員としても「コーチング」という言葉には敏感なつもりである。

あるプロフェッショナル認定コーチと称する方の本に、
「人は誰でも、やりたいこと、手に入れたいこと、実現したいと思っていることを持っています。それらを実現するための手段はいろいろとありますが、私が今まで出会った中でもっとも速く、もっとも効率よく、もっとも楽しい方法、それが『コーチング』です」、
と書かれていた。
そして、最近では「コーチング」とは、「コミュニケーション・スキル」、「コーチが持っているツール」、「テクニック」、「会話術」、「すぐ使える」などと書かれた本を頻繁に目にする。

様々な考えがあってよいと思うのだが、私が考えるコーチングとは違う。少なくともコーチングの本質は、「スキル」や「テクニック」では語れないと考えている。うまくいかないとき、「How to」がほしくなるのもよくわかる。「効率」や「楽しさ」もある方がよいと一般的には思われる。しかし、それこそ、「How to」ものはすぐに役に立たなくなる(もしくは、最初から役に立たない!?)。メンタルトレーニングなるものも然り(心が「How to」で強くなるならば、みんな心が強いはず!)。そして、楽しいだけのことから得られることも、たかが知れている。

役に立つものを手にするには手間隙(労力と時間)がかかる。さらに、ソフトボール元全日本代表選手で臨床心理士の中島先生は、「無理・無駄・無茶」がそろうと良いとさえ言う。

冒険家の三浦雄一郎さんが75歳で2回目のエベレスト登頂を果たときの第一声、「涙が出るほど、辛くて、厳しくて、嬉しい」、が思い出された(皆さんご存知のとおり、その後、三浦さんは2013年5月に世界最高齢の80歳でエベレストの登頂に成功された)。これほどの無理や無茶はあるだろうか(無駄とまでは言わないが)。「涙が出るほど、辛くて、厳しくて、嬉しい」体験を、いつか味わってみたい。「無理・無駄・無茶」なことには、「楽しい」ことにはない、何か大切なものが潜んでいそうだ。

もう一度言うが、すぐに役に立つものは、きっとすぐに役に立たなくなるぞ(戒め)。

齊藤 茂

第2回 「小さなこと」

2013.09.3

前回、小さなことこそ大切にできるチームを作りたいと書かせていただいた。「小さなこと」とは、具体的にどういうことだろう!?

2010年、甲子園春夏連覇を成し遂げた沖縄興南高校野球部の我喜屋優監督が著書のなかで以下のようなことを書いている。
「人の嫌がることを率先してやる、どんな小さなことでも手を抜かない、嫌なことや辛いことから逃げない」。どんなことでも最終的にはその人の「心」が決めるのだという。
例えば、四番打者であった
真榮平選手について。
目に見えない『裏の部分』を決して怠らなかった。朝の散歩やゴミ拾い、グラウンド整備など、人の嫌がることを真摯にやり続けていた。彼は表の四番打者であると同時に、裏の四番打者でもあった」

次に、栄花直輝選手が剣道世界一になるまでの心的鍛錬について、次のように書いている。
「一の清掃、二に勤行(ごんぎょう)」。初心に返り道場拭きから始めてみることにした。何が見つかるかは分からない。しかし、何かをしなければ変わらないと思い、20033月アメリカで開催された第11回世界大会の出発直前まで道場掃除を続けた。結果は個人・団体優勝。
何が変わったか?確かなことはいえないが、競技力向上に直結した一般的な強化方策だけが、成績の向上につながるわけではないということ。清掃から得たことは、『勝とう勝とう』という強すぎる気持ちを払拭できたこと。そのことが『無心の技』を打つ可能性を高めたのかもしれない。心の成長による心技体のバランスに変化があったように思うのである」

そして、もう一つ。
「小さなこと」は続けることに意味がある。たとえ、その時は「意味のない、無駄なこと」だと思ったとしても、継続することによってのみ意味が見い出せるのではないか。
2011年のアジアカップ準決勝の韓国戦の後半、本田選手の外したPKをゴールに押し込んだ細貝選手(現在ヘルタ・ベルリン所属)から、翌朝1通のメールが届いた。
「おはようございます!!本当に続けていて良かったです!!Jリーグでは一度もこぼれてくることはなかったですから
http://www.youtube.com/watch?v=z5rtmk-TLRA
何年も、数パーセントしかない可能性に対してチャレンジし続けた結果であったと思う。
まさに、「継続だけが力なり」

さらには「小さなこと」を続けていくことで、「小さなこと」にも気づけるようになるのだと思っている。

 齊藤 茂

第1回 「創部からこれまで」

2013.08.30

第1回のコラムは、松本大学男子サッカー部の創部からこれまでについて書かせていただこうと思う。
思い起こせば7年前の2007年4月、4名の部員と共に本学男子サッカー部を創部した。当然のことながら、当時は公式戦どころか練習試合を組むことすらなかった(人数的に麻雀はできたようだ笑)。

創部2年目には試合が成立するギリギリの人数が集まり、北信越大学サッカー連盟へ加盟申請し、交流戦へ参加。3年目は2部リーグ全10チーム中3位、1部チームとの入替戦で敗れ2部残留。そして4年目、2部リーグで優勝を果たし、1部への参入が決まった。5年目の一昨年シーズン、1部リーグでの戦いは得点13、失点61の数字が語るように、苦しかった。

しかし幸運なことに、最終的には全8チーム中7位、3勝11敗という厳しい成績ではあったが、入れ替え戦の末、なぜか1部に残留することができた。
創部6年目となった昨シーズン、大学の「重点部」として新たな戦いが始まった。総理大臣杯決勝トーナメントでは初めて1回戦を突破するなど(準々決勝で優勝校に1-3の惜敗)、力をつけている確かな手ごたえはあったものの、結局、リーグ戦は一昨年と同様の7位。入替戦では前半2点を先制するも、後半2点を返され、同点でPK戦。

「これを相手に決められたら負け」という状況まで追い込まれながら、PK戦(6-5)の末、この年もなぜか1部に残留することができた。

なぜ、残留できたのか。
入替戦当日は多くの在校生、OB・OG、保護者の方々や同志信大サッカー部の皆様を含め、100名を超える方々より、心からのご声援をいただいた。本当に小さな差で勝負が決したこの試合、こうした方々の力がなかったら勝利することはできなかったと思う。こうした体験を糧に、小さなことこそ大切にできるチーム作りをしていくことを誓ったシーズンであった。
そして、7年目の今シーズン、リーグは前半を終了し、2勝2分3敗の勝ち点8で5位。4位チームとの勝ち点差も「2」と肉薄してきた。昨年度の優勝校とも引き分け、上位チームから初の勝ち点も獲得することができた。

スターティングメンバーの半数以上を1・2年生が占める若いチーム(前期リーグ最終節のスターティングメンバーのうち、1年生3人、2年生3人)ということもあり、戦術面においても精神面においても、日増しにチームが良くなってきているのを実感できる。監督冥利に尽きる。

さて、本コラムではこうした「まさに監督冥利に尽きる!」と感じた体験や、(指導哲学とまではいきませんが)私が日々考えていることを書かせていただこうと思う。乞うご期待?

松本大学男子サッカー部部長兼監督 齊藤 茂

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